ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関するアプリケーション開発・研究開発 近未来型ものづくりを先導する 革新的設計・製造プロセスの開発

ご挨拶

世界最高水準のスーパーコンピューティング技術は、科学技術の振興、産業競争力の強化、国際貢献、安心・安全の国づくりなどの実現に不可欠な国家基幹技術と位置付けられています。我が国が開発したスーパーコンピュータ「京」は、平成24年度(2012年)より共用を開始し、現時点においても、世界トップレベルの性能を有するシステムとして、様々な成果を創出しています。さらに、「京」の経験を最大限に生かし、システムとアプリケーションの協調設計(コ・デザイン)により、次期フラッグシップシステムポスト「京」の開発が進められています。ポスト「京」は国際競争力のあるフラッグシップシステムとして、2021年頃の運用開始を目指しており、また、ポスト「京」を活用し、社会的・科学的課題の解決に資するアプリケーションの開発が求められています。
このような背景のもと、文部科学省「ポスト「京」で重点的に取り組むべき社会的・科学的課題に関するアプリケーション開発・研究開発」(全9重点課題)が選定され、その中の一つである、重点課題⑧「近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発」に採択されました。重点課題は、平成26年度~平成27年度の調査研究・準備研究を経て、平成28年度~平成31年度にわたり本格的に実施されています。
近未来社会における多様なニーズをとらえた付加価値の高いものづくりの推進は、我が国の持続的成長を支える産業の発展に必要不可欠な重要政策です。一方、世界的動向として、欧米を中心に生産工程のデジタル化・自動化による抜本的なコスト低減を狙ったIndustry 4.0等のICT(Information and Communication Technology) 化が進められています。これに対抗するためには、特にものづくりの企画段階における製品・技術コンセプトの創出力と、それを具現化する完成度の高い設計力を抜本的に強化するとともに、信頼性、経済性に優れるものづくりを可能にする革新的製造プロセスの開発を一体的に実施することにより、一段と高いレベルの効果を狙うことが重要となります。本重点課題では、これらの近未来型ものづくりの核心をなす手段である最先端スパコンの能力を最大限に引き出せるアプリケーションソフトウェア群を開発するとともに、それらを統合し設計・製造支援を行うための超高速シミュレーションプラットフォームの戦力化を目指しています。
本重点課題の推進にあたっては、東京大学生産技術研究所を中核機関として、東北大学、東京理科大学、山梨大学、神戸大学、九州大学、宇宙航空研究開発機構、および理化学研究所計算科学研究センターと密接に連携し、研究開発を進めています。本重点課題の目標の達成に向けて、6つのサブ課題(A、B、C、D、E、F)を設定し、共通基盤となる上流設計プラットフォームの強化・戦力化、その実証のための代表的製品設計システムの開発、今後の製造プロセスの核となる製造基盤技術の開発を推進しています。
引き続き皆様方のご理解とご支援を頂ければ誠に幸いです。

加藤千幸 センター長・教授

課題責任者
加藤 千幸
東京大学生産技術研究所
革新的シミュレーション研究センター センター長・教授